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「遅いわ!!何やってるの!!」
作戦司令室には家庭用ではありえないような埋め込み型のモニターが壁一面に、そしてたくさんの職員が各自パソコンの前に座って何かの数値の変動を確認している。
あれから作戦司令室へと向かった葵と流星だが、いかんせん葵は作戦司令室を知らず、流星も道を覚えていなかった。それから、エレナとマイクになんとか合流してここまでたどり着いたのだ。
「すいません」
不測の事態に過ぎないことでいささか不服だが、葵は自分の不備を認めて謝る。
「対象の光甲虫はおおよそ30メートル、体重120トンぐらいだと思われます」
恐らく、街の周囲の被害や建物の比較でそのぐらいだと分かったのだろう。
モニターを見ると意外性のある生き物が街の中を歩いていた。
「あれは…ペンギン…」
色は違えど、それは間違いなく葵もよく知っているペンギンだった。
「光甲虫は何故か地球によく似た生き物の形に変身するわ。ただし、色は真っ黒になるけれど…ね」
水族館や動物園によくいるペンギンを見て葵は思わず可愛いと思ってしまった。
その可愛いペンギンが、街中を歩き回り翼で建物を叩く様子はなんともシュールだった。
「さて…オッドロス出撃ね…二人ともパイロットの出撃ゲートに」 美夏の指示を受け、二人は出撃ゲートへ向かう。
エレベーターに乗り込み、金属製のドアが開くと、二人の目の前にはオッドロスと思わしきロボットが姿を現わす。
「これが…オッドロス」
黒と黄色をベースにしたロボットでどことなく禍々しいデザインで、葵は少し尻込みをする。
全てを見下さんとするその瞳、全てを絶対に燃やし尽くすと決めたかのような牙の浮いた笑み。全てを拒絶するかのように所々に生えた棘。その姿は正義のヒーローというよりも、悪魔の使者といった方がふさわしいだろう。
「行こう…葵。オッドロスで光甲虫を倒すんだ」
そうだ…元々行くと決めたのだ。これ以上迷う必要なんか一切ない。
葵は迷いを振り切り、震えそうになる体を無理やり押さえつけオッドロスへと乗り込む。
昇降式のリフトに乗り、オッドロスの胸あたりに開いたスペースに入り込み、椅子に座る。するとそのまま椅子が上へと上がっていく。無音で上がった先には辺り一面真っ白い世界の中に黒のスクリーンが広がっていて、座っていたはずの椅子はいつの間にか消えていた。
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