2章 訪れた時

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「葵ちゃん、大丈夫?」  流星の声が聞こえる。その隣にはスクリーン越しに流星の顔が見て取れる。それだけでどことなく安心できる。 「うん。でもなんか不思議な感じ」  立っているのにも関わらず、ものすごくリラックスしているような感じがした。例えると、ビーズクッションに座っているような感じが一番等しいだろう。 「これからカタパルトで海から射出されて、 僕らは光甲虫の元へと行く」 「え?カタパルト!!?』  会話の途中でブォーンと電子音が響き、スクリーンに景色が映し出される。それはオッドロスの前の景色だった。 「もしもし、葵ちゃん?今からカタパルトにのって、光甲虫の前まで飛んでいくわ。大丈夫?」  先ほど流星から聞いたことを美夏が通信で伝えてくる。 「さっき流星くんから聞いたわ。早く出撃しましょう」  考えても意味はない。考えても意味がないのならば、早く行動に移した方がいい。 「初出撃なのに随分肝が据わってるわね?あなた死んじゃうのかもしれないのよ?」  おどけた口調で美夏が言う。 「出撃前にパイロットを不安にさせるなんて、司令官失格なんじゃないの?美夏さん」 「ふふ、司令官はね。ただ無責任に励ますだけじゃない。部下が不安な時ははげまし、部下が無茶をしそうになったら止めるのが仕事なのよ」  なんとなく納得して、美夏を少し見直す。 本当は周りを思いやれるいい指揮官なのだろう。もしも出会い方が違えば、立派な上司に感じていたかもしれない。  感心している美夏を横目にさらに言葉を紡ぐ美夏。 「あなたはもう十分に肝は据わってる。戦い方はオッドロスが導いてくれる。だから失敗なんかするわけないわ。ただ、無茶をせず、できる限り怪我をしないように。ただ無事に帰ってきなさい」
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