2章 訪れた時

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 嫌いな人間のはずなのに、感動した。 「はい!!」  美夏の励ましに流星と一緒に明るく元気に返事をする。  激しい衝撃と揺れと共に、海底のハッチが開き、オッドロスはカタパルトから勢い良く地上へと射出される。海底から飛び上がったのにも関わらず、勢いは衰えずに海面を貫いた時に盛大な水しぶきが舞う。  そして二人はそのまま光甲虫の元へと向かった。  市街地にたどり着く。  空にはヘリが何機も飛び交い、人のいる気配がしなかった。 「避難勧告を出して街には人は残ってないから安心して戦いなさい」  美夏からの通信が入る。 「正面に敵確認。いくよ葵ちゃん」と流星。 「わかった」と短く葵は返事をし、二人は光甲虫の元へと行く。  ペンギン型の光甲虫はオッドロスが来たことに目をくれずただひたすら目の前の建物をその羽根で殴打していた。  一回叩くたびにガラスが派手に飛び散り、建物のコンクリートにヒビが入る。そして、なおも続く光甲虫の殴打にやがて白旗を上げるように建物自体が崩壊した。 「うぉぉおおおおお」  光甲虫が吠える。  光甲虫は叩き潰した建物の瓦礫を踏みしめ、次の倒すべき獲物を探す。手近にある建物に目をつけると、再びその建物を殴打し始める。「あの子…全然私たちのことをみていない…」   後ろからいきなり殴りかかるのは気が引ける。しかし、かといって無視するわけにもいかない。流星と葵は恐る恐る光甲虫に近寄り、背後を取る。 「なんか…ここまで無視されてると戦いづらいね」 「でもやらないと…。それが僕らの使命なんだ」
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