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そういう意味で考えると、葵には理解者となり得る人物は誰一人としていなかった。
外を見る。そこには青い空が広がっている。
ここのところ日本という国はどうにもこうにもおかしなことが増えている。
政府による情報規制、航空機の制限、それに伴い、自衛隊の武装強化。
国民の中には戦争が始まるのではないか?といった不安の声が上がっている。
風の噂ではアニメのロボットもののような怪物が街中を歩いていたという話も伝わってきた。どんな話にしろ、きな臭い話であることは確かだった。
ピンポンパンポーン。
「2年生の蒼龍葵さん至急校長室まで来てください」
軽いため息を吐いて、校長室へ向かう。
普段一切用のない校長室で問題も起こしてない自分が一体どういう要件で呼ばれるというのだろうか。
折れ曲がった青いスカートの裾を直し、教室のドアをガラガラと音を立てて葵は校長室へ向かっていった。
校長室へ着くと、そこには校長の他にスーツ姿の二人組が立っていた。
校長はその人物達に頭をさげると、校長室を後にする。
「蒼龍葵さん座ってください」
校長を呼び止めようとした葵をスーツ姿の長い髪の女性が引き止めて、椅子に座るように促す。
革張りでフカフカしていて、慣れていれば心地よいだろうが慣れてないと妙に居心地の悪い椅子にゆっくりと座る葵。
動揺していた。
スーツ姿の女性は名刺を取り出して、礼儀正しく葵に差し出した。
名刺をもらう経験のなかった葵は慣れない素振りで名刺を受け取り名前を見る。
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