2章 訪れた時

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オッドロスが振りおろしたハンマーは勢い良く光甲虫の頭を叩き潰す。グシャーという感触が腕に伝わり、振り切ったことを証明するように地面に派手な衝撃が走る。 「がぁああ!」  光甲虫は断末魔をあげて、体を一瞬ブルッと震わせて動かなくなった。 「はぁ…はぁ…」  戦ったことの緊張感か?もしくは疲れなのだろうか?葵は息が自然と荒くなった。 「よくやったわ。二人とも!」  額の汗を拭う。 「はい」短く返事をする葵。 「それでは作戦終了二人ともお疲れ様」  美夏の後ろからは月光対策省の人間の喜びの歓声が聞こえて来る。  私たちが守ったのだ。その思いが胸の奥からふつふつと湧いてくる。  葵はオッドロスの操縦席の中で小さくガッツポーズをした。  その様子をモニター越しに流星が微笑む。 「さぁ…帰ろうか。葵ちゃん。馴染めない地球の人の元へ」 「うん」  このとき、葵はこの世界も満更悪いものではないのかもしれないと思った。
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