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(月光対策省長官…海人美夏)
聞いたこともない省の名前だった。
葵はその名刺をセーラー服のポケットにいそいそとしまい込んだ。
「葵さんは、ここ最近日本で起きていること…何となくわかっているのではないです?」
美夏と名乗った女性は世間話をしつつ、校長室のブラインドを外から見えないように閉ざす。
美夏の言った言葉に思い当たる節はあった。
「今から話すことは嘘じゃなく全て…実話です…今から遠い昔、かぐや姫と呼ばれる女性が日本に来た話は知っていますか?」
「ええ。平安時代に書かれた作り話の一つでしょ?」
例え授業で習ってなかったとしても、こんな有名な物語わからないやつなどいないだろう。
「ではそれが事実だとしたらどうします?」
「え?何をいってるんですか?」
美夏の問いかけに、葵は思わず驚きの声を漏らす。物語が本当なわけがない。スーツ姿の女性が急にメルヘンチックなことを口に出すのは失笑するしかない。
「これは厳然たる事実です」
美夏はきっぱりと言い切るとさらに言葉を続けた。
「竹取物語は平安時代に書かれた古い物語の一つです。あの当時、かぐや姫は竹の形をした宇宙船に乗って地球…日本に来たのです。そして彼女は再び月に帰って行ったのです」
「大体なんで地球にかぐや姫が来たのよ?」
葵が美夏の説明に疑問を抱く。
「かぐや姫の計画は実は…月の民の生存計画だったのです」
葵は美夏の壮大な話に理解が追いつかないでいた。そんなことが果たしてあったのかさえも定かではないし、信ぴょう性のない話だから無理もない。
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