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「その昔、月には光甲虫という化け物がいて、
月の民と戦いを繰り広げていました。月の民は光甲虫との戦いに苦戦を強いられ、少しずつ劣勢になっていきました。そんなときにかぐや姫を地球に送り、月の民の生存計画が始まったのです」
「で…そのあと月の民はどうなったの?」
「恐らく…滅亡したのだと思います」
美夏の言い終わった言葉とともにシーンとした沈黙が場を支配する。
葵自身何を話していいかよくわからなかった。
美夏は慣れた手つきで校長室の壁にスライドを用意し、化け物の映像を映し出した。
「これが…全長4メートルの光甲虫です。これが既に日本で現れ、少しずつでも確実にこの日本の国土を蝕んでいるのです」
「そんな話…急にされて信じられるわけないでしょ!?」
スライドが切り替わる。
「古来にも光甲虫が日本に現れて、たくさんの災厄をもたらしました。その幾つかの例がヤマタノオロチ、そして玉藻前といった伝説的な妖怪です」
少しずつ具体?的になってきた話に葵は思わず唾を飲み込む。葵の反応を暗黙の了解と捉え、美夏は更に言葉を続けた。
「余談ですが、第二次世界大戦のとき無条件降伏をした際当時の天皇陛下を処刑しなかったのはこのオッドロスの武力に怯えたためという説もあるんですよ?もっとも、当時オッドロスに乗れる搭乗者は誰一人としていなかったんですけどね」
話を脱線し、歴史の裏話をして美夏は少しだけ葵に微笑んだ。
「月の民…かぐや姫はただ逃げてきただけではないのです。いずれ来たる光甲虫に備えて、この日本に対光甲虫対策兵器オッドロスを持ってきました。しかし、オッドロスは月の民にしか動かせない。そして、あなた蒼龍葵さんこそが月の民の子孫なのです。どうかオッドロスに乗って光甲虫と戦ってもらえませんか?」
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