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葵は、怖くて震えた。自分の方に日本の未来が地球の未来がかかっている現実が重くのしかかる。
それと同時に、なぜ自分が今まで社会に馴染めないのかも腑に落ちた。人種が民族が違うのだ。血は争えないというが、葵の中の月の民の血は無意識に周りを拒絶していたのだ。
「そんな…他の月の民の人はどこに?大体私まだ14ですよ!?そんなの馬鹿げてる!私がなんとかしなくてもきっと誰かがなんとかしてくれる」
葵は思わずソファーから立ち上がり、美夏の提案を否定する。
校長室のクーラーが無機質な風を受けて、葵の髪が揺れる。
「月の民は…あなたともう一人以外もう残っていません。分かりますか?地球を救うためにはあなたも戦う他ないんです」
「嫌よ…ならその人にずっと戦わせればいいじゃない!なんで私が戦わないといけないのよ」
「オッドロスには巨大な力と引き換えに、ある犠牲を払わなければいけません。それは思い出です。オッドロスはその思い出が強大であればあるほど、すごい力を発揮します。しかし、それでは今のパイロットが壊れてしまう。あなたの力が必要なんです」
「そんなの尚更嫌よ。なんで私が戦うの?」
葵はもう何も聞きたくなかった。耳を塞いで、その場にしゃがみ込み、ただ美夏の言葉を遮断したかった。しかし、中学生としてのプライドがそれを許さない。代わりに葵はこれでもかと嫌悪と憎悪を込め、美夏を睨みつける。
「銀河くん入ってきて」
美夏が校長室のドアの前の人物を呼ぶと、外から同い年ぐらいの男の子が入ってくる。
髪は真っ白で、目は青い。誰もが思わず見とれてしまうような容姿をしていた。
葵はその子を見たときに、心臓がドクッと音を立てるのを確かに感じた。
かっこいいのもあるけれど、それだけじゃない。今まで葵はかっこいい男子を見てもこんな風になった覚えがない。
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