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彼を見た瞬間に、葵は理論ではなくて感情で全てを理解した。
これこそがきっと血の宿命なのだ。愛しさと切なさと、懐かしさ。その全てが彼には感じられる。これが一目惚れなんだと葵はドキドキしながら彼を見つめ続けた。
彼もまた葵をじっと見つめ続ける。
「あの…私蒼龍葵といいます」
葵は高鳴る鼓動を必死に押し隠して、懸命に彼に挨拶をする。
しかし、彼は何も口を開かない。
なにか自分は彼の気に触るようなことをいったのかと、葵は不安になる。
「銀河くん初めての人には自分の名前を言って、よろしくお願いしますって言わないといけないのよ?」
美夏が優しく話しかける。当たり前のことがこの少年には欠けているのだ。
「あ…そうか。えっと…僕の名前は銀河流星14歳…だったかな?よろしくお願いします」 白色の?髪の彼、流星は優しく微笑みながら、葵に挨拶をする。
当たり前のことができない、当たり前のことが失われていく。
その事実に葵は、衝撃と諦めの感情が同時に二つ湧いてくる。理性ではこんな話は受け止めるべきではないと警告を鳴らしているが、感情は彼のために戦いなさいと言っている。
「こんなの卑怯です…。こんなことされたら、私戦う以外にないじゃないですか」
葵はただ単純に悔しかった。
これがもっといい出会いであれば、葵と流星はもっと仲良くなれたかもしれない。当たり前のことを失わずに、普通に恋愛ができたかもしれない。しかしそれはもう叶わないのだ。
それがすごく悔しかった。
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