2章 訪れた時

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 シャワーで濡れた髪を乾しながら返答すかる。  葵が養子にもらわれてきて1年後に出来た子供が未来だ。自分とは違い、明るく元気でクラスムードメーカーで誰からも好かれる可愛い子。  オッドロスに搭乗するのが自分で良かったのかもしれないと葵は半ば自嘲的に笑う。 「ふーん。そういうものなの?」 「大人になるってそういうものなのよ」と葵。 「三つか四つしか違わないくせに」  未来は唇をとがらせ、拗ねたような口調でおどけてみせる。  髪を乾かし、身支度を整え終わり葵はいよいよ美夏との待ち合わせの学校へと行く。 「お姉ちゃんはさ。何かと考えすぎなんだよ。世間はもっと自分を受け入れてくれるし、 案外そのこと知って好き勝手やってれば楽しいもんだよ?」  可愛い妹の増長っぷりには苦笑いしか出ない。 「あなたのその楽天的な考え方が羨ましいわ」   玄関でスニーカーを履く。 「お姉ちゃん行ってらっしゃい」  未来はアイスキャンディーを口にくわえて、姉に手を振る。 「ええ…ちょっとだけ行ってくるわ」  葵はドアに手をかけて、美夏の待つ学校へと急いだ。  学校につく頃には、未来のいうとおり汗をかきシャワーの意味が台無しになっていた。 「にしても…やっぱり夏は暑いわね」  汗に髪の毛がくっついて少し気持ちが悪い。  カバンからハンドタオルを取り出し、額の汗を拭う。そして、来る途中で買ってきたジュースの蓋を開けて喉を潤す。 「ぷはぁ~」  体の中にジュースが染み込む感じがする。 やはり夏に冷たいジュースという組み合わせは最高だ。  4分後ぐらいに、黒い見慣れない車が校庭へと入ってくる。  美夏だ。
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