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無意識だったらしく、気付くと慌てて、手を引っ込めた。
「ご、ごめん。つい、」
両手を上げて、謝られる。
まるで、私が強盗する5秒前みたいだ。
可笑しくて笑う。
「あ、ああ……なんだ……分からないけど……大丈夫ってことだね」
安堵のため息を零した君は、優しい声で尋ねた。
「付け入る様で悪いんだけどさ。良かったら話、聞いていい?」
私が首を横に振ると、君の表情を見た。
一瞬、目を止める。息が止まる。
君の酷く傷付いて、涙を溜めた笑顔。
でも、私は大きく首を振る。
表情を見ない様に俯いてから、深呼吸をする。
それで、割り切った様に伝える
「初めまして。大好きでした。」
泣き腫らした真赤な顔で、断る。
でも、その声と笑顔はきっと自然なものに出来た。
「さようなら」
踵を返して、桜並木を早足で抜けていく。
それなのに、私の早足はあっという間に、君に追いつかれる。
「初めまして。でも、大好きです。」
真っすぐな声が、春の空気を揺らす。
「僕は、君がきっと大好きだ」
凛とした通る声が、この世界に響く。
周りの人も、私達を見て、ひそひそと話し始める。
……やられた。
もう、振り返らざるを得ない。
そうやって、君と私は、また出会った。
君に、いつか伝えられる様にこうやって私は日記を書く事にしました。
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