交錯する運命

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交錯する運命

1  さんさんと照り付ける、 太陽。 光の洪水と呼べる、 眩しさ。 暑いけれども。 カラッとした空気。 南国特有の植物。 甘い香りが漂う。 信じられないほどの白い砂浜の先。 空を映した、 青い海が広がる。  吹く風が、 如月悠貴(きさらぎ ゆうき)の頬を優しく撫でる。 テレビを通してでも、 夢でもない。 現実に来ている。 実感して、 赤い花に負けぬ笑みを浮かべる。 「待ち合わせまで、 時間がある。 行きたい所に連れて行ってやる。 どこに行きたい?」 「海!」  バスの車内。 通路側の席に座る父如月光貴(きさらぎ こうき)に聞かれた。 窓から外を眺めていた悠貴は視線を外して、 即答する。 幼いながらも、 分かっている。 住んでいる村を出るのが難しい、 と。 来たチャンスは、 掴め! 出掛ける前の、 今朝も揉めていた。 「君の妻の悠子(ゆうこ)に会う。 外出許可は出ているな。 ……悠貴を連れて行く必要があるのか」 「実母に会わせるのは、 父親として当然の……義務です」 「しかし、 なあ……。 彬(あきら)さんがいない時に……。 置いていかねえか。 子どもの面倒を見てくれる奴なら、 いくらでもいるぞ」 「嫌です。 お断りします」 「約束を別の日に変えねえか」
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