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それにしても、このコロッケ・パンも一つのディテールを演出しているのであるが、住めば都のマイ・ルームもいつの間にか、ちょっと間違えば某国の戦闘区域状態。月並みに靴下、弁当の空箱、先々週の週刊誌が何冊か。森と川のせせらぎによるヒーリングCDも数枚重なり、ついでにブック・オフのワゴン・セールで買った、読みもしない一九八〇年代に活躍した某芸能人の暴露本などが散乱。男の一人暮らしとしては常道の生活環境ではあるが、立てかけてあるテーブルを置いてしまうと、超整理法を読んでいた俺にとっては納得できない煩雑さを覚える。カーテンの隙間から漏れた朝日によって、改めて俺はこの部屋の真実を知ったようだ。こんな住処では健全な思考回路は働かない、ということも含めて。
目覚ましのアラームが突然鳴った。再び巡る憮然とした電子音……いや、これは目覚ましではない。携帯電話のアラーム音だ。昨晩、念のために目覚ましだけではなく、携帯電話の方にもアラーム設定をしていたのを忘れていた。
「うるせえな」
自分でセットしておいて何だが、文句がてらすぐにスイッチを切る。よりによってこの携帯電話、アラームの音はピコピコとした電子音しかない。他に選択できるサウンドがなく、着信音のダウンロード機能もない。
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