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その入口を飾る暖簾をよろめきながらくぐり、僅かにひんやりとした空気に包まれた店内に足を踏み入れると、雪兎は呼び鈴を忙しなく鳴らしつつ奥にいるはずの人物に向かって声をかけた。
「来たぜ爺様、ちょっと善意で近所の掃除をしてたら遅くなっちまったよ」
腕に抱いていたカルマを応接用のボロいソファーに寝かせてやり、その隣で寄り添うように待つ。
すると薄暗い店の奥より朗々とした老人の声が響き、程なく姿を現した。
少々濁ってはいるが鷹の眼の様に鋭い眼差しを持った隻眼の老人。
明らかに堅気の人間ではない雰囲気を醸し出すその老人は、雪兎の姿を視界に入れると表情を柔らかく変化させ、一切躊躇い無く毒を飛ばした。
「随分と遅い到着だな坊主、連絡の一つ寄越さんから奴等に喰われてると思っていたぞ」
「冗談言っちゃいけませんよ、あんな雑魚如きに喰われてやる程僕は耄碌しちゃいない」
笑えない老人の冗談に雪兎は苦々しく表情を歪ませながら言い返すと、ソファーの前に置かれていた水を呷り気分を落ち着かせながら苦情を零した。
頬を伝って零れ落ちた汗が乾いたフローリングに落ち、忽ちのうちに飲み乾される。
「そんな事より爺さんよ、いい加減あれはやめてくれないかなぁ……。
前線に出ない馬鹿がいくら鬱陶しいからって、あれじゃ何時か必ず反感買うよ?」
「ふん、儂も無闇に人を殺める様な指示は出したくは無いさ。
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