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しかしだ、もしも連中が社会不安を煽るだけ煽っておいて立場が危うくなった瞬間手のひら返してトンズラしようとする虫以下の屑野郎だったならばどうする?」
「そりゃあ、その場でお仕置きですよ」
「だろう? 全くただでさえ治安が不安定だというのに革命なんぞ煽りよって。
偽りの夢や希望でアホを釣っても、何時か必ず報いを受けるだけだというのにな」
突然振られた話題に即答する雪兎に向かってうんうんと首を振ると、老人は白髪塗れの頭を掻きむしる。
いい加減馬鹿ばかりで飽き飽きしてきた所だと愚痴を零しつつ、背後に控えていた無愛想なメイドが運んで来た弾薬箱から紙幣弾薬を毟り取ると、本題とばかりに表情を変えた。
「そんな事よりもだ、とっとと用件を済ませるぞ。 態々こんな下らん話をする為にお前を呼び付けたのでは無いのだからな」
「言われずとも分かってますって」
催促する老人を宥めるように雪兎は苦笑いを浮かべると、カルマの髪の一本を軽く抜き取り、握り締める。
するとその髪の毛は瞬く間に一欠けの金属として形態を変化させ、雪兎の手の中へと収まった。
特殊成長金属グロウチウム。
中でも、非常に高い価値を持った高純度の物。
それを雪兎は何の感慨も無く摘むと、老人の手の中に放る。
「どうぞ、長らくご所望だったグロウチウム鋼です。
量こそ少ないですが解析用ならばこの程度で十分でしょう」
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