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「別に不満なんて無いさ、このまま何事も無く仕事が終わればな」
上機嫌なカルマとは対照的に、緊張感を保ちながら周囲を見渡す雪兎。
その心にはあまりにも都合が良すぎるという疑念が宿り、神経質なまでの歩みを無意識のうちに実行させていた。
証明は出来ないが絶対に何か厄介な物があるという確信が、雪兎の神経を否応が無しに研ぎ澄まさせ、無駄なストレスを蓄積させる。
『大気中毒素及び放射汚染レベル、共に異常無し。
敵生体反応も確認出来ません。 害獣が住み着いている訳でも無さそうです。
大丈夫ですよ、そんなに気を張り詰めないでも』
「本当かよ、水もあって温度も適度に保たれておまけに暗いなんて……。
奴等が繁殖するには持って来いの場所じゃないか」
パワードコートの袖口に投影されるモニターを注意深く見つめながら雪兎が訝しげに聞き返すと、カルマは眉を顰めて頬を膨らかす。
『大丈夫ですって、私がずっと周囲を監視していますから。
私に全てを委ねて安心して進んで良いんですよ?
……それともユーザーは私を信用出来ないんですか?』
「そういう訳じゃないさ、ただ僕はビビりだからね。分かっちゃ居るけど気を張っちまう性質なんだよ」
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