第3話 遺跡

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エリアを隔てる溝を飛び越え、蜘蛛は雪兎を磨り潰さんと身体を跳ね上げる。 刹那、擡げられていた上半身が突如作動した隔壁に挟まれ、千切れ飛んだ。 切断面から吹き出した血とも燃料とも取れる液体が硬質の床を赤黒く染め上げる。 死角から攻撃を受け、暫しの間カメラを忙しなく動かしていたガードメカ。 敵を排除することしか能が無いガラクタは許容ダメージが限界に達した事を悟ると、驚くほどあっさり動作を停止した。 人造の災厄の命が絶え、再び無音に包まれる地下空間。 その中を雪兎の苦しげだが満足げ息遣いだけが細々と響き続ける。 しかし周囲の敵反応が無いことを確認したカルマが表へと出てきた事で、重苦しい沈黙を湛えていた暗闇が途端に騒がしくなった。 『すみません、この程度の事で手間取らせてしまって。 でも約束は守りましたよ』 ここまで疲労困憊にするつもりは無かったとカルマは申し訳無さそうに頭を下げると、未だに地に這い蹲って荒い呼吸を続ける雪兎の身体を支え、その辺に置かれていたボロ革のソファーの上へと押し上げようと試みる。     
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