第3話 遺跡

9/17
前へ
/370ページ
次へ
最も力仕事には適さない筈の形態での一仕事にカルマは顔を真っ赤にしながら華奢な躯を酷使して必死に頑張るも、引っ張っていた服から手がすっぽ抜けた反動で転倒し、固い床へと顔面から思い切りダイブしてしまった。 『へぷっ』っという間抜けな悲鳴を最後に暫しの間突っ伏し続けた後、額と鼻面を赤く腫らし、涙目で立ち上がるカルマ。 その健気な様を見て、雪兎は思わず苦笑いを浮かべると目の前で揺れる小さな頭を優しく撫でてやりながら目を細めた。 「ありがとよ。 お前が居てくれなかったら間違い無くお陀仏だった」 埃を被り薄く汚れたカチューシャの上から雪兎がわしわしと不器用に優しく撫でてやると、カルマは満更でも無い表情で大人しく撫でられ続ける。 『別に褒められる様な事はしていません。私はただ怪しげだった隔壁の制御を奪ったまでです。 ……それにどうやら彼のお陰で当たりを引けた様ですよ』 やがて気が済んだのか、カルマは自らの躯を液状化して雪兎の手の中から抜け出すと、隔壁とはまた別に制御を奪っていた室内の照明を点灯させ、闇の中に隠されていた物を一斉に晒け出した。 「……!」 その光の元、現われ出た二つの巨大な影に雪兎は瞠目する。 凍り付いた雪兎の視線の先、そこには体表の半分を拘束具に覆われた二匹の龍が冷たい地に横たわり、とこしえの眠りへと就いていた。     
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加