第3話 遺跡

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優しげながらも何処か無遠慮なカルマの言葉に無愛想に返答しながら、雪兎はふらつきながらもゆっくりと立ち上がり、肉塊まみれのカプセルが視線に入らぬよう逃げる様に顔を伏せる。 だが、突如としてカプセル群が存在する方角より強い視線を感じると、反射的に対獣カービンを構えて勢い良く振り返った。 場所が場所だけに非常に不気味なものを感じ、無意識のうちに冷や汗を流す。 『どうしましたユーザー? 何か気になることでもあったのですか?  こちらのレーダーには何も映ってはいないのですが』 「……いや何でもない、恐らく僕の勘違いだ。  お前ですら探知出来ない存在を、僕が察知出来る訳がないからな」 怪訝な顔をして視線を上げたカルマを誤魔化しつつ、雪兎はちょっと気晴らしに歩いてくると伝えると再びコンソールを弄り始めたカルマの脇を通り過ぎ、気配を感じる方へ向かって歩き出した。 一歩進むごとに己を貫く嫌な気配が強さを増していくが、恐怖よりも好奇心が勝り、その歩みを加速させる。 比較的臆病な自分が何故このような気持ちになるのかと雪兎には理解出来なかったが、いざ気配の根源に辿り着くとそんな疑問は忽ち霧散してしまった。 気配と好奇心に導かれるままに雪兎が誘われたのは、円を描くよう等間隔に配置された7つの培養槽。 その内の一つに自然と意識を持っていかれる。     
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