第3話 遺跡

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唯一中身が存在していた培養槽の中に格納されていたのは、この世に現存する爬虫類全てを混ぜ込んで凝縮した様な姿をした醜い有機物の塊。 大きな目玉が印象的なその生き物のような何かは、汚らわしい緑色の液体の中で孤独に揺蕩い続けていた。 「なんだこれは、コイツも害獣なのか?」 教本にも記されておらず、自らの経験でも見たことが無い謎の生物に戸惑いを隠せず、雪兎は慎重に培養槽へと近づき中を伺う。 身体を丸め、目を閉じ、昏々と眠り続けている小さな怪物。 だがそれは雪兎の気配に気付いたのか、唐突に目を開き不用意に近づいて来た馬鹿を嘲笑うかのように牙を剥きだしにすると、分厚いガラスを難無く破壊し雪兎の顔面狙って飛び掛かった。 「なっ!?」 警戒心が僅かに和らいだ隙を見計らっての奇襲に雪兎はもろに斬撃を喰らい、顔面に深い傷を付けられた。 噴き出した鮮血が片目に入り一時的に視界を奪われ劣勢に立たされる。 「くぅ畜生、なめやがって!」 顔面を庇いつつ、雪兎は反撃とばかりに後方に飛んでいった化け物にマガジン一杯の銃弾を浴びせる。 ジープ程度ならば難無く穴だらけに出来る弾が金色の光を帯びて宙を駆け、化け物の肉体深くへと突き刺さる。     
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