第3話 遺跡

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腕の肉を喰らいながら肩にまでその魔の手を伸ばそうとする化け物に吐き捨てる様に言いながら、雪兎はカービン銃の銃口を噛まれた腕の付け根へと当てる。 その行為に一瞬戸惑い判断が遅れる化け物、それが運命の分かれ目となった。 「蜥蜴の尻尾切りってのはこうやるんだよ!」 雪兎の絶叫と共に撃ち出された弾丸が左腕ごと害獣の大顎半分を吹き飛ばし、その衝撃で化け物の目玉が文字通り二つに裂けた。 「痛ッッ……!」 筋肉の断裂面から迸った大量の鮮血と、言葉に出来ない程の激痛が雪兎の痛覚を出鱈目に掻き毟る。 だがそれに怯む事無く、雪兎はカービン銃を虫の息となった化け物に向けると弾倉全ての銃弾を叩き込み、背後にあった装置ごと粉砕してやった。 「見たかクソ野郎! ざまぁ見さらせ屑野郎ォ!!」 ズタズタになった死体を滅茶苦茶に踏み躙りつつ雪兎は嘲る様に大声で笑うと、そのまま糸が切れた様にどうっと倒れこむ。 敵が死んだ事による緊張からの解放と、吹き飛んだ左腕の付け根から溢れ出る大量の血潮が異常に冴えていた意識を急速に混濁させ始めていた。 「ちょっとやばいな……これは……」 朦朧とする意識の中、足元で広がっていく血溜まりに己の身体を染めながら後先考えずぶっ放した自分のアホさ加減を自嘲しつつ目を閉じる。     
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