第3話 遺跡

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左肩の切断面から不自然に生えた大顎は鱗まみれの左腕へと変態し 黒い髪は透明感のある長い白髪へと生え変わり 抜け落ちた歯の跡には肉食獣を思わせる強靭な牙が生え 剥がれ落ちた爪の跡からはナイフの様に鋭い刃が、指の中から皮膚を貫通して直に生えてくる。 その瞬間、雪兎の脳裏を最高に嫌な考えが過ぎった。 「身体を奪うつもりか!?」 頬を、背を、そして腹を鱗の様な何かが侵蝕し人間らしい器官全てを奪っていく中、雪兎は悲しげな目で自身を見つめるカルマを一瞥すると、自らカービン銃の銃口を咥え込み、身体の中で暴れ続ける化け物へと言い聞かせるように呟いた。 「残念だったな、この身体は死ぬまで僕のモンだ。 てめぇみてぇなクズに渡す位なら死んだ方がマシなんだよ……!」 人様の身体という神聖な領域さえ奪おうと画策する化け物を徹底的に罵倒し、再びトリガーに指を掛ける雪兎。 だがその勇ましい口調とは裏腹に、その表情は死の恐怖に凍り付いていた。 しかしそれはある意味当然とも言えた。 死に直面した人間が上辺を飾れる事など出来る筈が無かったのだから。 だが身体を侵蝕する害獣はそれを待ってはくれず、完全に思考を奪おうと侵蝕の速度を飛躍的に高める。 最早猶予の余地など無かった。     
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