第4話 超克

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瞬間的に雪兎は殺意を抱くも、死んでる者同士で殺し合いをした所で非生産的なだけだとすぐに思い直すと、咆哮の轟いた方角へゆっくりと向き直る。 一切の明かりがないはずの空間に突如生まれた、白熱電球程度の明るさを感じる空間。 そこに居たのは、自らの身体を容易く引き千切った憎たらしい獣だった。 先程木っ端微塵に吹き飛ばしたはずの爬虫類を象った化け物。 それが雪兎の前で牙を剥き出しに漂っている。 内心驚きはしたものの、雪兎は然程恐怖は感じなかった。 否、それどころか地獄の共連れが出来たととても嬉しく思っていた。 「ざまぁ見ろ、てめぇも地獄逝きだったって事だ」 思いがけない再会に雪兎は口端を吊り上げ意地悪く笑いながら目前の化け物を嘲る。 するとその化け物は遠雷の如く轟く咆哮を上げ、開いた顎門を人体よりも遥かに巨大に成長させると、雪兎の方へと向かって凄まじい速度で迫り始めた。 瞳には憤怒を宿し、カチ鳴らされる牙の合間からは汚らしく涎が滴っていく。 「僕が憎くて堪らないか? 良いさ、殺るならさっさと殺ってくれよ。  こんな所に放り込まれて永遠に放置される位なら完全に死んだ方がマシだ」 段々大きくなって来るその影をジッと見つめながら、雪兎は乞う様に化け物に向かって語りかける。     
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