第1話 覚醒

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「こんな所までよくもノコノコと……、畜生の分際でふざけやがって!!」 今まで虫一匹殺した事のないように穏やかだった顔付きを悪鬼羅刹の如く凄まじい面構えへと変貌させ、自身に接種された身体強化ナノマシンを起動し迫り来る敵への怨念を滅茶苦茶にぶち撒ける。 そんな雪兎を宥める様にカルマは優しい口調で指示を仰ぐ。 『どうしますユーザー、車掌にこの事実を伝えて一気に離脱しますか? それとも……』 「あぁそうだ、今ここで迎え撃つ!!」 即答し、雪兎はカルマの頭を飾っていたカチューシャを取り上げ、ポケットの中にねじ込んだ。すると、カルマの躯に更なる変化が生じる。 銀色の皮膚に包まれていた少女の躯がまるで氷の様に蕩け、車両の床の中へと瞬く間に飲み込まれる。 それと同時に、車両全体の壁面からカルマの声が響き渡った。 『了解しました……機体生成リミッター解除確認。  構成物質強制徴用開始、防護障壁展開します』 その言葉の瞬間、木目調の塗装を施されていた車内の壁が銀色の何かに侵蝕され、雪兎の立っている場所を中心に天井が、床が、内装品が大量のモニターに囲まれた狭い空間を構成する物質へと変貌する。 更にその変化は、車両の内部だけに留まらず外観にも影響を及ぼしていた。     
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