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自殺行為に及ぼうとする主人を強制的に止めるべくカルマが雪兎の神経に接続した瞬間、莫大なエネルギーが堰を切ったように自身のマイクロリアクター目掛けて注ぎ込まれて来るのを実感する。 生物どころか大型の発電所であっても捻出し切れないほどの圧倒的なエネルギー。 それは希望的観測という人間の悪癖を完全に排除したはずのカルマにも仮初めの期待を抱かせた。
確立はあまりにも低い。 だがもしかしたらと。
『仕方ありませんね、今回だけですよ』
半場ヤケクソなカルマの覚悟を得て、雪兎が纏った外套が周囲の物質を無秩序に食い散らしながら進化を強行する。
雄々しくも荒々しい鋼の龍、ドラグリヲ。
それは雪兎の激情に呼応するように咆哮を上げると敵に向かって一直線に走り始める。
敵の姿を視界に入れ、嬉しげに拳を握る赤き龍 “紅蓮” 目掛けて。
「殺してやる、僕の命を賭してでも!」
コックピットの中でそう口走る雪兎の心に恐怖は無く、 ドラグリヲの出力を急上昇させると全力で躍り掛からせた。 己のプライドだけでなく、名も知らぬ誰かの命を守る為に。
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