第5話 灼熱

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だが、派手な立ち回りとは裏腹に紅蓮には依然として傷一つ無い。 「一体どうなってやがる、タフってレベルじゃあない!  まるで分厚いコンクリの壁でもぶん殴ってるみたいだ!」 『ただタフなだけではありません。 奴は被弾直前に最小限の動きで貴方の攻撃を受け流し、ダメージを微小なものに抑え続けています。  敵ながら何とも素晴らしい腕前です。 もし奴が人間であったなら首領が喜んで登用したことでしょう』 「褒めてる場合かアホ!」 嵐のように荒れ狂う乱打を何とかしのぎつつ、雪兎は暢気に敵に賛辞を贈るカルマを怒鳴りつける。 最初の攻勢はどこへやら、何時の間にか攻守が逆転し雪兎は劣勢に立たされていた。 手刀、正拳、掌底、貫手と多種多様な攻めと紅蓮自身が発する高熱の連携はドラグリヲの堅い防御を徐々に抉じ開け、装甲だけでなく基幹フレームや内部機器にも衝撃を奔らせるようになる。 無論、内部に居る雪兎の身体も例外ではない。 『コックピット内気温40度突破。 ユーザー平気ですか?』 「平気にみえるなら人体の仕組みを一から勉強し直した方が良い。  大丈夫な訳ないだろう! このままじゃ蒸し焼きにされて殺されるぞ!」 『冗談ですよ、貴方が苦しい思いをしていることは私も重々承知しています。     
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