第1話 覚醒

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雪兎が乗り込んでいた装甲列車の最後部が銀色の殻に包まれると共に強制的に連結を解除され、やがて停止する。 風を切る音が止み静寂に包まれる荒野、しかし直ぐ様別の何かの雑音が空の果てから響いて来た。 それは人を殺し、千切り、喰らい尽くす異形の化け物“害獣”の到来を告げる羽音だった。 夜空に冷たく輝く月を背に、蜂を巨大化させた上に肥大化させた様な外見をしたグロテスクな化け物共が徒党を組んで迫って来る。 それらは荒野に一つ放置された銀色の卵を視界に入れると、喜びの奇声を上げつつそれに向かって一斉に襲い掛かった。 過去に人類が産み出せた酸以上の溶解力を持つ液体を撒き散らしつつ、殻の表面に太く大きな針を撃ち込んでヒビを入れると、卵の表面を流れていた溶解液がその中へと染み込んでいく。 幾ら硬度がある物質であろうと彼等に取って大した障害には成り得ず、銀の繭は瞬く間に破壊寸前にまで追い込まれ、最も巨大な身体を持った個体がトドメとばかりにその上に飛び乗り、顎を突き立てようと大きく身体を仰け反らせた。 「死ね、虫けら」 刹那、突然卵の中から突き出された盾の様に分厚く頑強な腕が、顎を突き立てようとしていた害獣の頭蓋を掴み、圧壊した。     
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