第1話 覚醒

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太く強靭な鋼色の爪の合間から脳漿と潰れた頭の破片が粘質の気味悪い音を立てながら地面に落ち、哀れにも標的になった化け物の胴体はゴポゴポと呻きを漏らしながら緑色の血潮を派手に吹き上げ、動かなくなる。 同胞の唐突な死に浮き足立った害獣共は直ぐ様宙へと舞い上がり、牙を激しくカチ鳴らして威嚇行動を開始した。 腕だけが突き出た繭を中心に円を描くように陣形を組み、援軍を要請するフェロモンを散布しながら周囲を忙しなく飛び回る。 しかしそれは害獣共にとって大きなミステイクであった。 繭の中で中途半端に育っていた物はその隙にボディの生成を完了し、今まさに目覚めを迎えようとしていた故である。 「馬鹿共が」 畜生共の間抜けっぷりに内心感謝しながら雪兎は眼前で淡く光るメインモニターに視線を向け、精神を集中して神経を機体と同調させると、ありったけの怒りと憎悪と殺意を込めて最終起動確認コードでもある愛機の名を叫んだ。 醜き異形の獣を屠る、白き異形の鋼の名を。 「オオオオ! ドラグリヲォオオオオオ!!!」 天高く轟き、地を揺るがす咆哮に気圧され宙を舞う害獣共が思わず動きを止める。 瞬間、繭の中から放たれた二発の砲弾が一匹の害獣の身体を粉微塵にして吹き飛ばし、砲弾内から溢れ出た爆炎が傍を飛んでいたもう一匹の害獣を飲み込み一欠片残さず焼き尽くした。     
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