5人が本棚に入れています
本棚に追加
/370ページ
第3話 遺跡
彼方から水が跳ねる音がした。
冥府へとそのまま繋がっている様にも錯覚する深淵の底で、何かが水面に落ちる音がトンネル状の狭い通路の壁を伝って反響する。
そして、その音の波間を掻き分ける様に踏み鳴らされた雑音が神秘的にも思える水音のリズムを大きく乱し、狂わせた。
「何でこんな近場の馬鹿でかい遺跡を見落としてんだよ。 こんなん一人で探索させるモンじゃねぇって」
カルマの躯から生成された対獣ライフルを構え、用意して来た暗視グラスで周囲を注意深く索敵しながら、雪兎は愚痴りつつも引き返す事無く地の底へと潜って行く。
結論から先に言うと、今回の探索は大当たりだった。
老人から示された地点の先にあったのは、大規模な軍事研究施設の跡地。
あらゆる地下空間から隔絶するようにひっそりと存在していたその遺跡には奇跡的にも盗掘の痕跡一つ無く、半信半疑だったカルマをも忽ち笑顔にさせるほどの物資が溢れていた。
『いいじゃないですか。 私この仕事を引き受けて良かったと思っています。
天引きされる分を考慮しても、お釣りが来るほどの収穫があるんです。
一体何が不満だというのですか?』
最初のコメントを投稿しよう!