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第5話 灼熱
闇の中に真白い光と赤黒い焔が踊る。
規則的な円を描く動きを続ける赤と、不規則で直線的な動きを繰り返す白。
それらが衝突する都度に大気がざわめき、地が揺れる。
『馬鹿正直に真正面から拳が来ます。 上手く捌いて下さい』
「言われなくとも分かってる!」
カルマの警告が響いた瞬間にコックピット目掛けて拳が放たれ、それをドラグリヲの盾のように堅牢で分厚い腕が受け流す。 しかしそれでも紅蓮自身の肉体に宿った熱量は凄まじいもので、きちんと防いだにも関わらず雪兎の肌の表面に汗が浮く。
「こいつはきついな、気を抜いたらそのまま焼き殺されそうな勢いだ」
『気持ちで何とかなるんなら少しくらい我慢して下さい』
「やかましい! 空調を強くするくらい気が利いたことが出来ないのか!」
カルマの何気ない軽口により、ただでさえ神経質になっていた雪兎は不快さと怒りを露にすると、それをそのまま紅蓮へぶつける。
大きく弧を描いた白銀の尻尾が鞭のようにしなって紅蓮の全身を打ち据え、手足の鋭利な爪が打撃の間隙を縫って突き出される。 不規則かつ高速で叩き込まれる攻撃の数々は繰り出されるだけで大気を掻き回し、幾度も風が泣き叫ぶ音を響かせた。
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