恋人は今日も変態です。

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side 仁科 『ちょ、もう少し…休憩、くだ、さい…』 地面に転がり息を切らせる部員達。 もうすぐ大会あるってのに、何甘っちょろいこと抜かしてやがる。 『体力つけろバカ野郎が。次河川敷までダッシュ往復、いくぞ。』 こっちだって同じように基礎練してんだ。 体が悲鳴を上げてるのは分かるが、持久力上げないと4分間の試合を最後まで全力で戦うことは難しい。 勝敗は一瞬。 どんなに劣勢であっても、最後の1秒まで勝機があるのが柔道なのだから。 『…うぃーす』 今にも死にそうな声を出しながらも、一番に立ち上がる部員に視線を投げる。 身長は低くないが、けしてガタイが良いとは言えない体躯。 日焼けしにくい体質なのか色の白い肌。 それでも乱れた胴着から見える腹には程よく筋肉がついている。 『ぜってぇ、リタイアしませんから。』 負けじと睨んでくる切れ長の一重。 その視線にゾワ…と背筋に走る試合にも似た高揚感。 コイツ、悪くない。 【佐伯】と書かれた胴着に手を掛け引き寄せる。 『しっかり着いて来いよ、モヤシ』 あの日から佐伯という男が気になって仕方なかった。 厳しい先輩だと怖がっているくせに、授業の休み時間に遊びに来たり。 女を連れて歩いていたかと思えば、その女を置いて俺の横に並んだり。 引退してからも顧問に頼まれてコーチを続けていれば、『いい加減顔だすの勘弁して下さい』と文句を言いながらも最後まで弱音を吐かずについてくる。 『先輩が好きです』 冗談とは思えない真剣な口調で告白された日には不覚にもドキッとさせられた。 もともとゲイの俺が、まさかノンケを相手に本気の恋をするとは思ってもみなくて。 『知識も経験も豊富なら、美里がリードしてよ。』 初めてセックスをした日、ノンケの佐伯が萎えないようにネコ役を甘んじた。 佐伯の前で自身を弄り後ろを解した。 熱を帯びたあの切れ長の一重に見つめられると、どうしようもなく昂った。 今までタチで通してきた自分のテクを、まさか自分に使うことになるとは… そう思いながらも、佐伯と一つになりたい一心で自分の中の《悦いところ》を探った。 『見られて興奮してんの?』 愉しそうに言葉で攻められることにゾクゾクした。 佐伯との初めてのセックス… それが、自分の性癖の『目覚め』だった。
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