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撤退が開始されると直ぐに敵の猛烈な追撃部隊がやってきた。 頼斗も奮戦するが、敵の数は圧倒的だった。 敵の目的は基地から持ち出す物資や人員を出来るだけ減らすことなので、頼斗達ヒトガタとは構わず、逃げる味方を狙ってくる。 その中には助言をくれた精神科医ミーリスも居るかもしれない。 と思うと焦りが募った。 その焦りが照準を狂わせる。 「くそっ!くそっ!くそがっ!」 たった一つの助言が頼斗を大きく変える事など無く、やはり、頼斗のヒトガタの性能は安定しなかった。 だが、ヴェインへの怒りが対抗心に置き換わった事は僅かながら良い影響をもたらしたようだ。 「やたっ!当たった!」 ようやく一機撃破したものの、やはり巨大なランチャーは自分にも、そして、この戦局にも合っていないと判断した頼斗はそれを捨て去った。 「おい!勝手な真似をするな!」 それは勿論、命令違反だった。 間違った命令でも、それを勝手に捨ててはいけないのが軍人というものだ。 頼斗には不要な武器だったとしても、部隊全体としては必要な役割だったのだ。 目障りな対空砲火が減った事で敵は遠慮なく、地上部隊に襲い掛かる。 ・・・だが、頼斗はそれを、ことごとく撃退した。 「ふむ・・・隊長、敵は我々ではなく、撤退する味方に向かっています。地上からの砲撃は効果が薄いかと」 「なるほど、ゴードの言う通りかもしれんな。では、ゴードも空戦に切り替えろ」 「了解」 そこからはまるで歯車でも合ったかのように敵の撃退が上手く行くようになる。 頼斗は、それが自分の功績だと誇らしく思えた。 その事は勿論ヒトガタの性能にもフィードバックされて、更に戦果を向上させる。 それは頼斗が久しぶりに本来の力を発揮できた瞬間だった。 だが、そんな頼斗の戦いに水が差される。 「おい、調子に乗るなよ。お前は勝手に命令違反したんだからな。責任を問われる事を覚悟しておけよ」 それはヴェインからの通信だった。 それを言うのは戦いが終わってからでもいいはずだった。 ヒトガタでの戦闘能力だけでなく、人のやる気を無くさせることに関しても一流だな。と頼斗は一人毒づいた。
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