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「新人にウチの隊のルールを叩きこんでおけ。後は任せたぞ」 ヴェインはぶっきらぼうにそう言うと、准将を連れだって部屋を出て行ってしまった。 暫しの沈黙の後・・・ 「くそが!」 頼斗が椅子を蹴飛ばしながら吠えた。 「そうなるよねー」 リタが苦笑いでそう言った。 「アンタらは、あんな奴が上官で嫌にならないのか?」 「まあ、でも、実力は確かだし」 「あんな奴の下でヒトガタに乗ってたら命がいくつあっても足りやしない!」 実戦中に先ほどのような悪態をつかれた場合の事を頼斗は想像していた。 「怒り」はヒトガタの出力を瞬発的には向上させるが、それはその後の性能を著しく低下させる。しかもそれはコントロールが難しく、頼斗はこれまで何度もそのコントロールに失敗して窮地に陥っていたのだ。 「まあ、慣れ・・・かな?」 リタはそう言うが、頼斗は全く賛同できそうも無かった。 「よろしく。ゴードだ」 突然そう言うゴードに頼斗は虚をつかれた。 「名乗ってなかったろ?ゴードだ」 「あ、ああ、頼斗・・・です」 頼斗が突然の事に呆けているとゴードは頼斗が蹴とばした椅子を直してそこにどっかりと座って話し始めた。 「まあ、彼が素晴らしい上官ではない事は確かだけど、今まで素晴らしい上官に出会った事はある?」 頼斗は少し記憶を遡ってみたが、該当者はいなかった。 「あんまり居ないんだよね。素晴らしい、非の打ちどころの無い、完璧な上官てさ。なにせ、人間って不完全なモノだからね」 「だから、我慢しろって事すか?」 「ま、平たく言うとそうだね。俺もフォローするからさ。一緒に頑張ってみようよ」 「アタシも!アタシも!」とリタが便乗する。 頼斗は二人を見ながら、溜飲が少しずつ下がるのを感じた。
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