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「ほら、もう泣かないで。
この足で区役所へ行ってらっしゃい。
婚姻届は休日も処理してくれるんだから。
お互いの戸籍の書類はもう準備してあるんでしょ?」
私が戸惑いながら頷くと、お母さんとお父さんはまたエレベーターに向かって歩き出した。
「琥珀亭で待ってるから、急いで行ってきてね」
あっという間の出来事だった。
幹太に限っては、未だにポカンとしている。私は、そんな幹太の手を取って家の中へ入る。
「幹太、そういう事みたいだから、今から区役所に行こう」
「え… マジで?
っていうか、この展開に、俺、ついていけてない…」
幹太はそう言いながら、右手で涙を拭きとった。
「ねえ、俺ら、夢見てないよな?」
私は笑いながら、幹太にキスをした。
「夢じゃないよ…
夢じゃないから、急がなきゃ、お母さん達が待ちくたびれて機嫌が悪くなっちゃう」
「…分かった、でも、一分だけ待って」
幹太は私を抱き上げ、部屋の中をクルクル回った。
そして、今までにないほどの濃厚なキスをする。やっと、俺達は、結婚できるぞって涙声で囁きながら…
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