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幹太は目を覚ましたように慌てふためいてそう言った。
すると、二人は顔を見合わせて二人仲良く首を横に振った。そして、お父さんがお母さんに目配せする。
「寧々、幹太君、今日は二人に渡したい物があって、ついでにここへ寄ってみたの」
お母さんはそう言いながら、持っているバッグの中から水色の空を思わせるような優しい色合いの縦長の封筒を取り出した。
「…遅くなったけど、はい、婚姻届。
これは、幹太君の事を、認めて受け入れた証拠です…
心が楽になったと思ったら、あなた達にすぐにこれを渡したくなって」
お母さんはそう言うと、大きく深呼吸をした。
「ほら、寧々の職場の事だから、お母さんよりよく知ってるでしょ?
今から行ってらっしゃい…
お母さんとお父さんは琥珀亭で待ってるから…
ささやかだけど、お祝いの会をしましょう」
お母さんはそう言って、その空色の封筒を幹太に渡した。
「幹太君、寧々をよろしくお願いします…
色々あったけどね…
でも、色々あったのは、私達だけじゃない…
寧々にとって、救世主がいるとしたら、それは私達家族じゃない…
それは、鈴木幹太君だって、ごめんね、やっと気付いたの…」
お母さんはもう涙は浮かべてない。やっと、本当の自分を見つけたみたいなそんな晴れ晴れとした顔をしている。
それとは逆に、幹太は溢れ出る涙を止める事ができずにいた。
泣いているのか笑っているのか分からない顔で、何度もお母さんに頭を下げている。
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