始まりは不運

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「まず、俺が渡ってみるから。 大丈夫そうだったら、その後に付いてきて」 俺は怖いもの知らずのやんちゃ坊主だった。 足も速くて力もあって運動では誰にも負けない。 俺にできないものはないなんて、真剣に思っていたほど。 怖がる友達に笑顔を見せ、俺はその崖の道をスイスイと渡った。 きっと今までもこの道を使った人がいたと思わせるような、手をのせるくぼみや、足を引っかける石のでっぱりが所々に散在する。 俺はあっという間に向こう側に渡った。 「全然、大丈夫! ちゃんと足をのせる所とか手で掴むくぼみとかあるから、そこを見ながら渡って来いよ」 俺の掛け声の後、後の二人もスイスイと渡ってきた。 下を見ればゾッとするけど、前だけ見てれば何も怖くないし危険な感じもしない。 思いの外、楽しかった俺達はこの遊びに“勇気”という名前を付けた。 ちょっとくらいスリリングがある方が、俺達にはちょうどいい。俺達は馬鹿みたいに何度も何度もその崖を渡って楽しんだ。
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