ボクとミヤビ

3

　車のクラクション音がずっと鳴り響いていた。僕の目は少しずつ明瞭になっていき、何が起きたのか把握しようとした。体を動かすとわき腹あたりがちくりと痛んだ。そして、右足にはあまり力が入らない。

　父さんと母さんはと僕は首を動かして、見回す。が、まさに戦いが終わった後のように悲惨だった。
目の前にあるはずの運転席と助手席はぺちゃんこになっており、原型をとどめていなかった。

　僕は思わずどうしようと呟いていた。

　大丈夫ですかという声を聞いて、僕は助かったと安堵した反面、父さんと母さんを助けてと懇願した。

　しかし、父さんと母さんは即死だったらしい。そう医師から告げられて、僕は真っ暗闇の奥底へと落ちていくような絶望を感じた。なぜ、僕も一緒に死ななかったんだとさえ思った。僕は右足の骨折と右脇腹の打撲だけですんだ。あまりにも残酷だと、握りこぶしを地面に叩きつける。

　目をつぶり悲しみを全身で受け止め、再び目を開けたときだった。僕の目の前から光が奪われていた。さっきまで映っていたものが消え、真っ暗な世界がどこまでも広がっていた。

　僕は死んだのかと錯覚するほど、混乱した。

「何も……見えない」

　僕の言葉に何人もの人が駆け寄ってきたのを感じた。目のあたりに少し風を感じた後、本当だと言って、慌ただしく僕の元から走り去っていったり、駆け寄ってきたりしていた。

　僕は嬉しかった。父さんと母さんだけが不幸になって、僕だけが何事もなかったように過ごすのは嫌だったから。でも、涙は止まらなかった。

　展望台からの美しい景色がもう見られないかと思うと、残念でならなかった。
　そして、僕の全盲生活が幕をあげた。