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「製造番号ナンバー002番、秘書用アンドロイド男性版、製造名レイジ。それがおめぇだ」
僕は動揺した。今までのレイジとの記憶を遡っていく。どこにも違和感など存在しない。むしろ、僕のことを様々な言葉で励ましてくれたレイジを兄のように尊敬していた。それがアンドロイドだったなんて信じられるはずがない。
「おっちゃん待ってよ。レイジさんは人間のように体温もあるし、単独で行動も取れていた。現に、喫茶店でレイジさんは俺のことを待っていた……」
そう言い切ったところで、僕自身も気づいてしまった。あの喫茶店はアンドロイドのみの来店を許可しているということに。
おっちゃんは僕の表情を見て何かを感じ取ったのか、一つ息を吐いた。
「そういうことだ、健太。こいつは俺が作った最高傑作のアンドロイドだ。それだけじゃない。ここにいるみーんな俺が作ったアンドロイドだ。人は俺とお前さんしかいない」
違和感の正体は足音だった。あれほどの怒号が飛び交っているに、足音が一切なかったのだ。足音がしないのは量産型アンドロイドの特徴である。
「俺の目が見えていればアンドロイドだと分かりましたか?」
僕は力ない言葉に情けなくなった。
「いーや、わからないだろうな。その中でも、レイジは絶対にわからない。あのアンドロイドを識別する金属センサーがなければ判断はつかんよ。レイジは完成したアンドロイドだからな」
レイジの動く音が微かにした。
「シロヤマ先生」
「どうした?」
「もう、作らないのですか?」
レイジはおっちゃんの機嫌を窺うように訊いた。
そんな感情のこもった言葉を耳にして、僕は気になってしまった。どうしたら人間のように繊細な心をもつアンドロイドが生まれるのか。
「作らんよ。お前が最後だ。それ以上はない。ゴールまでたどり着いたら、それで終わりだろ。あとは、お前がやりたいようにやればいい」
レイジが一歩ずつおっちゃんに近づいていくのがわかった。
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