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ビギニング
その日は、誰にとってもいつも通りの日常の連続の一節になるはずだった。
「おい、何だあれ!?」
「ロボット?赤と白の?」
今、彼等が見上げる空で、大立ち回りを演じる二体の巨人さえなければ__
「戦ってるってのか?」
「だんだん降りてきてる……?危なくないかしら……?」
「やばくね?動画とっとこーぜ」
拳と体躯そのものが強くぶつかり合う__その迫力を見ても暢気な野次馬をよそに、搭乗者同士の剣のんな雰囲気の舌戦が始まる。
『ふはは、怖かろう!?民を護ろうと言う気概は認めるが、その動かし方……やはり温室育ちの素人だな!』
『くっ__わざわざハッキングまで仕掛けて、言いたいことはそれだけですか!』
その返しに深紅の機体の搭乗者は、不気味に笑う。
『いや、街を攻撃すると言う予告もさせて頂く』
『っ!?やめなさい!』
赤と言うよりも深紅と言った方が適切な色味を持った機体が、既知のどれにも該当しない__既存の語彙に無理矢理当てはめるならば白金色と言う呼称が似合うだろう色に染まった機体を無視して、小口径の砲口が備え付けられた掌を前に突き出し、エネルギーをチャージしてから血の様に紅い光線のような物を街に放たんとする。
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