第1章

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3月になって、クラスの雰囲気に、ちょっと違和感を感じた。 皆の立ち振る舞いが、妙に落ち着いていて、誰もが少し、大人びて見える。 朝のホームルームに、担任がやって来るまでの、ちょっとした無法地帯も、いつもと違っていた。 相変わらずのバカ話。 場違いな悪ふざけ。 唐突な女子会。 月曜日のコミック。 あからさまなスマホ。 隠れて打つメッセージ。 同じように見えるが、なんだかしっくりこない。 僕は逆に、煩わしさを、感じない。 取り残された感じがしなかった。 皆、気づき始めているんだ。 この風景の見納めが、近づいていること。 もう、数える程しかない、高校生活の終わり。 ここを離れなくてはならないから… 違うかな… 向こうから、離れる。 学校が、去っていくんだ。 それが、卒業。 サナと同じように… いつもの帰り道、切り過ぎた前髪の話の後、不意に彼女は言ったんだ… 「卒業だね… 私達もさよならしよう」 突然の発言、突拍子も無いのは、相変わらず。 僕は微笑んで、彼女に応えた。 一人で、寄り道でもしてく気? それとも、昔のドラマの真似? サナは、何も言わずに、ただ微笑んでいた。 溜めた涙をこらえて…
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