三日月猫と悲しげホライゾンI

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三日月猫と悲しげホライゾンI

  ○  ●  新宿駅から出発、丸々夜を通して、翌朝には富山、高岡、金沢を経由して福井県へ。  それが青年──田倉 弥人(たぐら やひと)が乗り込んだPM22:55発、夜行バスの運行ルートだった。  青年が目指すのは、福井県坂井市に存在する"自殺の名所"として有名な東尋坊のある福井県坂井市だ。  ゆったり4列シートとは名ばかりの、さほど広くない快適シートの座り心地はあまり良くないは余り良くなかったが、用意されていたチケットを使っての搭乗なのだから、文句を言えたものでもない。  新宿を出てからは早いもので、一時間少々が経っていた。  高速道路上を走行しているのか、時折聞こえる僅かな段差を超えていくガタンという音以外、ほとんど静まり返った空間の中。  青年は閉じられたカーテンの、僅かな隙間から現れては消えていく黄色い光を眺めやりながら、明日のことを考えていた。  ──明日。  こんな糞みたいな腐った世界からおさらばしてやる。  青年は明日、この世界から消える算段を立てていた。
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