三日月猫と悲しげホライゾンI

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「えへへ、実は私は霊感があるのです。嘘だけどね?」  嘘なのかよ、とは突っ込まない。  しかし、あながち嘘でもない気がしてきて、心を見透かされてしまう予感がして、もうコイツとはしゃべらないと心に誓う青年。 「ま、生きるのは素晴らしいとか、これから死ぬ私が言うのも、おかしいよね」  見当違いな方向でくすっと笑った少女に、思わず「本当だよ……」と呟くように漏らして、青年はしまったと顔をしかめた。   誓ったばかりの誓いをもう破ってしまった。  正直、もう他人と関わりたくなんかないというのに。  いや駄目だ。  たとえこの先、何を言われようが無視しよう──青年はそう改めて自分に言い聞かせた。  そんな青年の内心はどこ吹く風とばかり、少女はそれだけ言って背もたれに身体を預けると、目を閉じて静かに寝息を立て始めた。  どうやらこれ以上、不思議ちゃん発言を続ける気はなかったらしい。  いいからアイマスクはちゃんと目を覆って寝ろよ……と滅茶苦茶ツッコミを入れたくなるが、そこは我慢だ。  気付かぬ内に心の隙間に入り込んでくるようなその少女に警戒心を持って、青年は気持ち外側に身体を向けて目を閉じた。  まだバスは目的地まで程遠いのだ。
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