三日月猫と悲しげホライゾンI

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「やったー! ホットケーキ!」  届いたホットケーキの箱を嬉しそうに見つめながら、少女が隣に置いていたカバンから何かを取り出す──取り出したるは、細い試験管のような容器だった。  中身は赤、それはまるで血のようで。  しかし少女、青年の驚く瞳には目もくれず、なんだか軽やかに、まるで鉛筆回しのようにくるくると容器を回転させるとテーブルにそれを置き、目の前に置かれたホットケーキをご開帳する。  何だそれ。  無意味な思考の連鎖を全放棄して、青年は思わず身を乗り出した。 「待て! ……な、なんだそれ」 「ん、ケチャップ?」  首を傾げながら、指先で持ってその容器を振る少女。  一見すれば血にも見えたそれは、なるほど振っても中で揺れ動くことはない。  少女はその容器を開けると、中に入った赤いとろっとした液体を、それはもう堂々とホットケーキにかけた。 「……えっと。何してんの」 「何してんのって。マイケチャップをかけてる?」  いやそういう話でもなくて。  プラスチック製のナイフとフォークを両手に装備した少女は、何を言ってるんだろうと言わんばかりの真っ直ぐな視線でそう返してくると、容器の中身を半分以上ぶっかけた、出来立てで湯気すら見えていた今は無残なホットケーキに刃を突き刺した。  まさかのケチャップ・イン・ホットケーキ。だが、少女はキラキラした瞳で、それはもう嬉しそうに解体し始める。そんな少女を見ながら、青年は目頭を押さえた。  なんなんだろう、この子は。本当になんなんだ。  少女に対する疑問ばかりがこみ上げるものの、 「……、……」  だがしかし、それを問いかける勇気はまだ青年にはなくて、仕方なしに注文したバーガーやらポテトやらを、疑問と共に腹の中に収めることにする。

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