花見嫌い

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飛鷺季(ひろき)さん、ね、降りて来て。今年も御客様が沢山いらしてるの」 「御祖父様と御父様の御客様でしょう、ぼくには関係有りません」 「然んなこと言わないで、後生だから…飛鷺季さんのことも皆さん気にかけてくださってるのよ、御挨拶だけ…」 「御父様がなされば宜しいじゃありませんか、ぼくみたいな子どもの挨拶を聞きたいような人が居る訳ない」 「家族全員が揃ってないなんて示しがつかないじゃありませんか…ね、飛鷺季さん」 「其れならぼくは『学友に誘われて花見に行った』ことにしましょう。御庭の皆様の目に触れないよう屋根裏に居りますから、御安心ください」  自分の顔が意地悪く笑って居るのが、飛鷺季には能く判る。深窓の令嬢として大事に大事に育てられ、家の中のことは疎か我が子の育児も碌にしたことのない母は、一男一女が高等学校に上がるような歳に成った今も猶、素直と美貌だけが取り柄の御嬢様の儘だ。
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