坂崎のこと

1/7
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

坂崎のこと

 まるで、雪が舞い散る様な光景だった。  桜の花の色はピンク色、と脳内にしっかりと刷り込まれていたのだが、思っていたよりもその紅色は薄くて、もはやこれは白に近いなと、はらはらと風に踊る花びらを飽きずに眺めていた。  こうやって、ゆっくり桜を見上げるのは何年振りだろう。  一昨年の桜の時期は、受験に失敗して浪人が決定し、落胆して花を見上げる気分ではなかったし、去年の今頃はギリギリに入学が決まったこの東京郊外の大学近くに引っ越す為の準備に追われ、気がつけば桜の木はわっさわさと若葉を茂らせていたっけ。  実に三年ぶりの花見である。  ゼミの仲間で花見をしようと、地元出身の学生が薦めてくれたのはとある公園だった。比較的大きな寺院の敷地内にあるその公園は、寺院に併設されていた幼稚園が少子化によって閉園となった後、住職の好意で近隣の住民に開放されている場所で、敷地をぐるりと囲んだソメイヨシノが実に見ごたえがあり、知る人ぞ知るお花見の人気スポットになっていると言う。  アミダで場所取り役を引き当ててしまった俺は、夕方からの花見の数時間前にこの公園を訪れて、ゼミの準備室から持参してきたブルーシートを広げ、久々の桜を堪能していた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!