群青アステリズム

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それからというもの記憶を消し、その空いたスペースに新たな記憶を取り入れ自分の技術、思考を高めていくことに魅せられた来宮はどんどんIOTMにのめり込んでいく。 だが、新たな記憶を得るためには自分の元々の記憶を消さなくてはならない。 だが、躊躇うことなく自分の記憶を消し、どんどん己を高めていく来宮の周りからはだんだんと人がいなくなっていった。 その中でも唯だけは来宮を心配して、何度も言葉をかけるが来宮は聞く耳を持たない。というか持てなかった。自分の中の正義(=元の記憶よりも新たな記憶を得て自分を高めていくこと)に絶対的な自信を持っていたのにも関わらず、誰もそれに対して否定しかせず離れていく人々に怒りさえ覚えていた。『唯だけは…わかってくれるよな?』と尋ねるが唯は『…ごめん。』と絶対的な味方のはずだった唯さえ離れていくことをまたきっかけにますます『信じられるのは自分だけだ』と強く思うようになる。(その時の唯のごめんの意味は、わかってあげられなくてごめんね。という意味であったが来宮は気付かずに唯と距離をとってしまう。) どんどんIOTMにのめり込んでいき、自暴自棄になりついには大事にしていたペットの記憶、楽しかった学校生活、友人の存在の記憶を消してまでも新たな知識を手に入れた。右肩上がりに業績や功績、技術が上がっていく中来宮の心に空いた穴が少しずつ大きくなっていっていた。だが、もうあとには引けないところにまで来ていた来宮はその穴を気付かないように研究に没頭していた。(来宮の研究内容は母親の未知の病気を治すためのものである。)だが、その母親を助けたいという思いから始まったその研究の動機さえも消してしまった記憶に含まれていた為、ただ自分のために機械のように研究の日々を送っていた。だが、唯の記憶だけは来宮は消していなかった。どうしても消せなかった。あの時の『ごめん…』が頭にこべりついて忘れたくても忘れられないような気がしてならなくて、これだけは唯と過ごした日々だけは、唯の存在だけは消すことが出来なかった。 『僕はきっと誰よりも寂しい人なんだと思う…。』
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