群青アステリズム

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『会いたい女性がいる。』(=唯) と思い立ち、研究から少し離れ唯を探す旅に出る。連絡手段もない、自分の名前すらわからない、そんな中で彼女を探す。 通っていた小学校や中学校、高校を父親から教えて貰い、行くがそれはもう消してしまった記憶。思い出せるはずがなかった。だが不思議と高校に足を踏み入れ、順番に教室を回っていく。 ある教室(高校2年時のクラス)に入った時、記憶が脳内を駆け巡るような衝動に駆られる。『こ、これは…?』 『あの…』と後から声が聞こえ、振り返ると、唯一覚えている顔と声が。 『私、自分のこと何一つ分からないんですが、貴方のことは何故か覚えているんです。』 『僕も…、自分の名前は分からないのに貴方のことは忘れられなかったんです。』 『奇遇ですね。』 『きっとよっぽど大事だったんだと思います。』 『私もです。時雨君。』 『唯っ…』 お互いが唯一の存在であった来宮と唯。 これは、君ともう一度記憶を築いていく物語。 『あなたは僕(私)の唯一の人。』 『経緯』 私は寝たら基本的に嫌なことは忘れられるタイプですが、本当に嫌だったことはずっと覚えています。というか人間の脳はそういう風に作られているとどこかで聞いたことがあります。嫌な記憶に縛られて前に踏み出せない人ってきっと沢山いると思うんです。そんな中で前に進むきっかけとなるかもしれない、と考えた『嫌な記憶を消す』というものをテーマに作品を書きました。誰にでも嫌なことが沢山ある世の中で、もし紙切れ1枚で記憶を消してしまえる世の中になったら…。だとしても本当に大事なものってきっと消さないんだろうなぁと思い、自分の名前を消してでも忘れたくないものは何かと自分に問いながら書いていました(私はきっと家族)。ですがもし、消えたとしても何かをきっかけに少しずつ思い出していくのではないのかなと…。 便利すぎる世の中でも必ず欠点があります。人と人との繋がりです。ちゃんと自分の口から伝えることが難しい世の中になってしまいましたがそんな中で、大切なのは自分から動くこと、自分の思いを言葉にすること、自分の言葉で紡ぐことをずっと大切にしていけたらいいなと思い、書きました。 この物語が誰かの、本当に大切なものや失いたくないもの、逃げてはいけない事と向き合えるきっかけとなれればいいなと思います。 楯石 絢(タテイシ ジュン)
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