憧れの人

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「みなみ?どうかしたの?」 扉を閉めてから、背中を扉につけて寄りかかった。 「ううん、なんでもないの」 あーーー やっぱりムリだったぁ。 握手してもらえるチャンスだったのに。 優貴くんがせっかく手を出してくれたのに。 わたしときたら 自分の差し出した手が気になってしまったのだ。 ふと見た自分の人差し指にささくれが あったから。 恥ずかしくなって 思わず 手を引っ込めちゃった。 せっかく握手できるチャンスだったのに。 どんだけ 心が弱いんだろう私。 ささくれなんか 気にしなけりゃ良かった。 でも、指先にささくれがあるような 女だと優貴くんに思われたくなかった。 あーーー あんな事きっと もう一生ないだろうに。 まあ、でも 肩に残るぬくもり 顔に残る優貴くんの手の感覚。 凄いことだったな。 学校ではなくて、 こんな場所で 偶然に会うなんて。 しかも!
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