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第一章 襲来
プロローグ
――夢を見る。
小さい時からずっと、不思議な夢を見ることがある。
といっても将来の夢みたいな可愛い夢ではなくて、悪夢みたいな恐ろしい夢って訳でもなくて。
まるで子宮を満たす羊水に漂っていた赤ん坊の頃のように、どこか懐かしく穏やかな夢。
子守唄がBGMで、背景は澄み渡る空で、聞いたこともない言葉を話す人たちに囲まれながら、穏やかな笑みを浮かべる母親を見ている。
そんな夢。
もちろん一度もそんな風景を見たことはないし、イメージしたこともないけれど、なぜかくっきりと見えるその夢を何十回と見てきた。
心が成長するに連れて理解できる感情は増え、最近は優しさの中に悲しさが混じっていることに気付いた。
でも、なぜそれが混じっているかは全く見当がつかなかった。
――あの日までは。
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