第一話 前哨的絶望

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 ――しかし、数秒経っても奴の腕が僕の方まで到達することがなかった。  恐る恐る顔面を覆う自分の腕をどけてみると。    「こ、これはぁ? まさかぁ……」    奴は動きを止めていた。  というより、動けないという表現のほうが正しいかもしれない。   「……あなたがターゲットの……」    奴は完全に沈黙した。   「ハアッ、ハアッ」    やっと動くようになった足を庇うように立ち上がり、背後の板切れに背中を預けて状況を確認する。   「これは、一体……?」    だけど、不可解な現状からは何も分からなかった。  
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